No.69(十字軍)  : 

「十字軍は西欧社会をどう変えたか?」

約200年間に及んだ十字軍は、第1回で聖地イェルサレム奪回に成功したのみで
後は大失敗に終わった。よって提唱者であるローマ教皇の権威は失墜し、多く戦
死・戦傷した諸侯や騎士は没落し始めた。そして両者と対照的に、フランスやイギ
リスの国王は指揮者として活躍し、ライバルである教皇や諸侯・騎士の没落もあっ
て王権を伸ばした。また、東方貿易に代表される遠隔地商業の発展により北イタリ
ア諸都市を中心とする商人の実力が向上した。つまり、「十字軍によって中世が終
わり始めた」と言える。

<評価の観点>
関心・意欲・態度:
9.11事件に際して、米国大統領が「十字軍を!」と失言したことを知り、現代的な
意味でも大きな興味を持って、意欲的に学習に取り組もうとしている。

思考・判断:
レコンキスタやドイツ人東方植民にも共通する時代背景として、経済的・社会的な
「ヨーロッパの成熟」が十字軍を現出したことを把握しつつ、中世の「終わりの始ま
り」について考察している。

資料活用の技能・表現:
第1回十字軍のイェルサレムでの「蛮行」を示す資料と、第3回十字軍でイェルサレ
ム奪回時のサラディンの「騎士ぶり」を示す資料を対比することで、当時の両世界
の「文明度」を比較できている。

知識・理解:
十字軍の大失敗が、中世の主役である教皇・教会の権威失墜や、諸侯・騎士の没
落を促すとともに、次代の担い手である国王の権力伸張や、都市の商人の実力向
上の背景となったことを的確に判断している。